更新日:2024.03.29ラウンドアップは危険だから禁止されたの?実際の規制状況を詳しく解説

SNS等では、あたかもラウンドアップは危険なものだから海外では規制されているかのような主張があります。「日本で使っているが問題はないのか」と、不安や疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。

実は、ラウンドアップの規制や禁止は一部の国や地域に限られ、現在でも世界各国で使用されています。禁止の理由も安全性の問題ではなく、その多くは農業用以外での使用、例えば景観維持の観点からグリホサートに限らず化学農薬全般の使用を禁止しているような事例であるため、注意深く確認した方がよいでしょう。

この記事では、ラウンドアップの実際の規制状況や「禁止された」と言われる理由について、専門家の見解を交えて解説します。

ラウンドアップは危険だから禁止されたの?

一部の国や地域では、農業用以外での使用、例えば景観維持の観点から使用を禁止しているような事例があります。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートにあたかも発がん性のリスクがあるかのような主張がありますが、日本をはじめ世界各国の規制機関が発がん性のリスクはないと確認しており、WHOや国連食糧農業機関など国際的にも同様に評価されています。そのため、現在でも世界中で除草剤として使用されています。食品からの摂取も残留農薬基準値という“量の規制”で安全性が確保され、基準値内なら人の健康に何の影響もありません。

ラウンドアップは世界で最も使用されている除草剤

ラウンドアップは日本だけでなく、世界で最も使用されている除草剤のひとつです。現在でも販売数量は順調に伸びており、年々増加しています。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートには40年以上にわたり使用されてきた歴史があり、その間に省力的な使用方法などが確立したこと、多くの論文や研究により安全性の検証が繰り返されてきたことも要因のひとつです。

ラウンドアップは、適用する雑草の範囲が広く経済的なだけでなく、アミノ酸を原料とすることから環境への安全性も高いと言われています。このため、農業用から一般家庭用、緑地管理用などさまざまな用途での利用が可能です。たとえば、農業用であれば天候に左右されず散布翌日には耕起できる、家庭用なら大切な花や木を守り雑草だけ枯らせるなど多くの利点があります。

ラウンドアップの使用は禁止されている?

ラウンドアップ製品は現在も世界各国で使用されています。各国の規制機関で安全性が確認されており、150以上の国々で使用が承認されています。日本では厚生労働省・農林水産省・内閣府食品安全委員会が科学的知見に基づき安全性を確認し使用を認めています。

海外では、米国環境保護庁や欧州食品安全機関、オーストラリア農業・動物用医薬品局などの各国規制当局も安全性を承認しています。WHO(世界保健機関)やFAO(国際連合食糧農業機関)など国際的にも同様に評価されています。

一部のSNS等では、あたかも世界中で禁止の流れになっているかのような主張がありますが、実際には使用を制限される国はごくわずかです。

(参考:『ラウンドアップの現状説明会』

実際の規制状況

一部の国や地域でラウンドアップの有効成分グリホサートが規制されている理由は、安全性に問題があるからではありません。その多くは農業用以外での使用、例えば景観維持の観点から使用を禁止しているような事例であり、グリホサートに限らず化学農薬全般に対するものです。

そのため、規制されている国でも、全面的な利用規制というわけではなく、舗装面や非農耕地での利用規制にとどめられており、農業生産場面では変わることなく使用されているケースが多くなります。

各国の使用状況

実際に、海外各国ではラウンドアップ製品の有効成分グリホサートをどの程度使用しているのか、使用比率を以下に紹介します。また、EU各国は別表で解説します。(2017年現在)

国名 使用比率
アフリカ 2%
アジア 15%(日本は0.9%)
ヨーロッパ 5%
ラテンアメリカ、カリブ諸島 46%
北アメリカ 25%
オセアニア 7%
合計 100%
EU各国 使用比率
スペイン 0.8%
イタリア 0.7%
フランス 0.5%
イギリス 0.3%
ギリシャ 0.2%
ポーランド 0.1%
ドイツ 0.1%
オーストリア 0.0%

※EU 各国は主要国のみ抜粋

以上のように、世界各国でグリホサート(ラウンドアップ製品の有効成分)は利用されています。特にラテンアメリカや北アメリカ、アジアなどの世界で主要な農産物の生産国で使用比率が高いと理解できます。

(参考:『ラウンドアップの現状説明会』

なぜラウンドアップは禁止されたと言われているの?

あたかもラウンドアップは危険だから禁止されたかのような主張は、国際がん研究機関による分類を誤認しています。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに発がん性のリスクがないことは、40年以上にわたり科学的根拠に基づき、世界各国の規制機関で繰り返し確認されています。毒性学の専門家、東京大学名誉教授 唐木英明氏の見解も交えて解説します。

国際がん研究機関による分類が発表されたから

国際がん研究機関(以下IARC)は特定の物質や要因が、人に対し発がん性を有するか(ハザード)を調査し、4段階に分類した「IARC発がん性分類」を公表しています。しかし、IARCがグリホサートを美容師や理容師、夜間シフト労働、赤肉、65℃以上の熱い飲み物などと同じグループ2Aに分類していることからも分かるように暴露量を考慮に入れたリスク評価ではありませんので、規制に用いられるものではありません。

物質そのものの発がん性の強さや、摂取時のリスクの大きさを表していると誤解されるものの、同じカテゴリーに分類された内容を見れば、実際にがんを引き起こすリスクではないということが分かります。

IARC発がん性分類を元に規制をかけるのであれば、豚肉・牛肉やハム・ソーセージも禁止しなければならないことになると唐木氏は解説します。

(参考:『Chapter3グリホサート(ラウンドアップの有効成分)の発がん性のリスクは否定されている』

遺伝毒性や発達障害との関係が注目されたから

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートには、神経毒性・発がん性・繁殖能に対する影響・遺伝毒性のいずれも認められないと内閣府食品安全委員会が発表しています。(2016年7月)あたかも遺伝毒性との関連性があるかのような主張は間違いです。

また、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが発達障害の一種であるASD(自閉症スペクトラム障害)をもたらすかのような主張についても注意が必要です。グリホサートとの関連性は千葉大学社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授のグループが2020年5月に発表した論文において、「グリホサートがASDの原因である可能性がある」という仮説を提示したにすぎず、科学的に証明されたものではありません。千葉大学リリースの「今後の展望と課題」にも、「本実験で用いたグリホサートは高濃度(0.098%)であるため、本結果からヒトでの妊婦のグリホサートの摂取が、子どもに ASDを引き起こすという結論は導き出せない」とあります。

さらに、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、農薬登録を受けるために実施される各種毒性試験において神経学的に影響しないことが確認されています。

パンから検出され問題視されたから

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、小麦などの農産物を雑草害から守るために世界各国で使われているため、輸入小麦などを原料とするパン等からもごく微量ながら検出されます。しかし残留量はパン1kg当たり0.05mg〜0.18mg程度です。一方、内閣府食品安全委員会ではグリホサートのADI(一日摂取許容量)を体重1kgあたり1mgと定めており、安全性に問題がないことが分かります。

なお、ADIとは、ある物質を一生涯毎日摂取しても、健康への悪影響がないと推定される一日あたりの摂取量のことです。専門家の唐木氏は、グリホサートの危険性について「これは一日摂取許容量からいうと、(体重50kgの)大人だったら1日50mg。(中略)体重50kgの大人だったらパンを1日に50kg食べなくてはいけない」と解説していることからも、パンから検出されるグリホサートの残留量が人の健康に何の影響もない量だと理解できます。

(参考:『Chapter6パンやお菓子からグリホサート成分がごく微量検出されたとしても、 一日摂取許容量(一生の間、毎日食べ続けても安全な量)以内なら安全性は守られている』

ラウンドアップの規制状況を正しく把握しよう!

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性は、第三者による検証論文の積み重ねを経て科学的に証明済みです。さらに世界各国の規制当局が発がん性・遺伝毒性・神経毒性などの危険性がないことを公表しており、現在も世界各国で販売・使用されています。一部の国では使用が規制されていますが、その多くは農業用以外の使用、例えば景観維持の観点から使用を制限している事例であったり、グリホサートに限らず化学農薬全般に対するものであったりと、安全性が理由でないことは明らかです。

一部のSNS等では、あたかも発がん性等の危険性を理由に規制または禁止されているかのような主張がありますが、これらは誤認が多く科学的根拠のない言説が多いため注意しましょう。ラウンドアップのような農薬や化学物質の危険性を煽る言説で不安になったときは、それぞれの主張の根拠を確認し、科学的根拠に基づいているかどうかを確認するのがおすすめです。

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