ラウンドアップは食糧生産から一般家庭での雑草対策、自然環境保護を目的とした防除まで、幅広い用途で使用されている除草剤です。除草剤と聞くと、毒性や発がん性物質の有無など、安全面が気になる方もいるのではないでしょうか。
一部のSNSなどではあたかも危険であるかのような主張が見られますが、ラウンドアップは多くの安全性試験がなされ、農林水産省によって使用を認可された除草剤です。科学的根拠のない情報を鵜呑みにせず、公的機関の評価に基づいて安全性を判断しましょう。
本記事では、ラウンドアップの危険性が気になる方に向けて、科学的根拠に基づく情報や各国規制機関の見解を紹介します。
ラウンドアップの危険性は？
ラウンドアップには、発がん性や遺伝毒性といった危険性はありません。
一部のSNSなどでは、ラウンドアップにあたかも人体への影響があるかのような誤認が見られます。しかし、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、内閣府の食品安全委員会をはじめとして、世界各国の規制機関から人体への安全性が確認された成分です。
ここでは、ラウンドアップの危険性に関するさまざまな疑問に対し、科学的根拠に基づいて回答します。
ラウンドアップには発がん性物質が含まれている？
ラウンドアップに対するよくある誤解の一つが、有効成分グリホサートに発がん性があるという主張です。しかし、内閣府食品安全委員会が行った発がん性試験により、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの発がん性は否定されています（※）。
発がん性があるという誤解が生じる原因の一つが、IARC（国際がん研究機関）による評価です。IARCの評価では、グリホサートを美容師や理容師、夜間シフト労働、牛肉・豚肉・ラム肉などの赤肉、65℃以上の熱い飲み物などと同じグループ2A（ヒトに対しておそらく発がん性がある）と発表しました。この内容を見れば、グリホサートが実際にがんを引き起こすリスクを持っていないことが分かります。しかし、これは使用量や暴露量を考慮しないハザード評価であり、人の健康へのリスクについて述べたものではありません。つまりIARCの分類については、それほど心配する必要はありません。
日本をはじめとして、EU、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの各国規制機関の評価により、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの発がん性は認められていません。
（参考：『グリホサートに係る食品健康影響評価に関する審議結果（案）についての意見・情報の募集結果について』）
ラウンドアップには遺伝毒性がある？
いいえ、ラウンドアップに遺伝毒性はありません。遺伝毒性とは、DNAや染色体に影響を及ぼすような毒性のことで、細胞のがん化を引き起こすメカニズムの一つです。
内閣府の食品安全委員会は、発がん性試験と同様に遺伝毒性試験を実施し、結果としてラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに遺伝毒性はないことが分かっています。
遺伝毒性試験では、物質とDNAの相互作用を測定し、DNAの損傷や修復反応、遺伝子突然変異、染色体異常などが認められないかを評価します。内閣府の食品安全委員会がチャイニーズハムスターやラットの細胞を用いて行った遺伝毒性試験では、いずれの測定項目も陰性となり、遺伝毒性は認められませんでした。
ラウンドアップは神経系に影響を及ぼす？
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートには、神経系への影響はありません。
内閣府の食品安全委員会は、食品中の残留農薬に対し、さまざまな試験を通じてリスク評価を行っています。その一つが、残留農薬の神経学的な影響を調べる神経毒性試験です。
内閣府の食品安全委員会が実施した急性神経毒性試験および急性遅発性神経毒性試験では、グリホサートの神経毒性は認められませんでした。また反復投与による毒性試験でも、神経系への影響は認められませんでした。
ラウンドアップは内分泌撹乱物質？
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが、内分泌撹乱物質であるという科学的根拠はありません。
内分泌撹乱物質とは、『生物個体の内分泌系に変化を起こさせ、その個体又はその子孫に健康障害を誘発する外因性物質』です（※）。内分泌撹乱物質に関する研究には、まだ科学的な不確実性も多く、国際的なコンセンサスは得られていません。科学的根拠の積み重ねによって、慎重にリスクを評価する必要があります。
US EPA（米国環境保護庁）やECHA（欧州化学機関）によるリスク評価では、グリホサートが内分泌撹乱物質という兆候はなく、人間の健康や生態系への影響も確認されていません（※）。
（参考：『内分泌かく乱物質問題』）
（参考：『食品安全情報（化学物質）No. 20』）
（参考：『食品安全情報（化学物質）No. 24』）
各国規制機関によるラウンドアップの安全性についての見解
ラウンドアップ製品の有効成分であるグリホサートは、現在も世界各国で使用されています。日本の内閣府食品安全委員会だけでなく、アメリカ、EU、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの規制機関によって安全性が評価されているのが実情です。
ここでは、各国規制機関によるラウンドアップの安全性についての見解を紹介していきます。
米国環境保護庁
米国環境保護庁（US EPA）は、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、いかなる人体への健康リスクも認めていません。ラベルに記載された使用上の注意に従う限り、安全に使用できるとしています。
また米国環境保護庁は、グリホサートのヒトに対する発がん性を認めておらず、乳幼児、子ども、出産可能年齢の女性の全てに対し、グリホサートが残留した食品を摂取しても健康上の懸念はないと報告しています。
カナダ保健省病害虫管理規制局
カナダ保健省病害虫管理規制局（PMRA）は、1995年に設立されたカナダ保健省の支部です。主にカナダにおける農薬規制を担当しています。
グリホサートに関するカナダ保健省病害虫管理規制局の見解は、米国環境保護庁の見解と一致しています。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートには、発がん性や遺伝毒性は認められず、カナダ地域において使用することが可能です。
欧州食品安全機関
欧州食品安全機関（EFSA）は2015年11月にグリホサートサマリーを公開し、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートには、ヒトへの発がんリスクがないと発表しています。
また米国環境保護庁と同様に、欧州食品安全機関はグリホサートの内分泌撹乱作用についてもリスク評価を実施しました。結果として、グリホサートは内分泌撹乱物質ではないと結論付けられ、EU地域で引き続き使用することが認められました。
欧州化学機関
欧州化学機関（ECHA）は、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、発がん性、変異原性、生殖毒性、遺伝毒性のいずれも存在しないと結論付けています。
変異原性とは、遺伝毒性とよく似ていますが、細胞や遺伝物質（DNA、染色体）の不可逆的かつ永続的な変化を誘発する性質を意味します。欧州化学機関の評価によれば、グリホサートに変異原性は認められていません。またグリホサートには、胎児の早期死亡や形態異常といった生殖毒性もないと発表しています。
オーストラリア農薬・動物用医薬品局
オーストラリア農薬・動物用医薬品局（APVMA）は、ヒト・動植物・環境を保護するため、農薬や動物用医薬品の安全性を評価する機関です。オーストラリア農薬・動物用医薬品局は、米国環境保護庁の見解と同様に、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに発がん性はないと結論付けています。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの発がん性は、オーストラリア農薬・動物用医薬品局、カナダ保健省病害虫管理規制局、欧州食品安全機関、欧州化学機関、ドイツ労働安全衛生研究所、ニュージーランド環境保護局、そして日本の内閣府食品安全委員会といった世界各国の規制機関によって否定されています（※）。
（参考：『食品安全情報（化学物質）No. 20』）
ニュージーランド環境保護庁
ニュージーランドでは、主に雑草管理を目的としてラウンドアップ製品が利用されています。
ニュージーランド環境保護庁（NZEPA）は、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、発がん性や遺伝毒性はないとしています。また2015年には、ニュージーランド産の牛乳からグリホサートが検出されなかったこと、さらにグリホサートの残留があったとしても、健康上のリスクを引き起こす可能性は低いという見解を発表しました（※）。
各国規制機関はラウンドアップの危険性を否定している！
ラウンドアップは農林水産省による認可を受けた除草剤です。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、日本をはじめとした各国規制機関のリスク評価によって、人体への安全性が確認されています。
また内閣府食品安全委員会の安全性評価においても、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに発がん性、遺伝毒性、神経毒性、内分泌撹乱作用がないことが確認されています。一部のSNSで見られるような科学的根拠のない言説を鵜呑みにせず、公的機関の評価に基づいて判断してください。
