
除草剤のラウンドアップ製品は、アメリカで使用が禁止されるかのような主張は本当でしょうか。
ラウンドアップは現在もアメリカを含む世界各国で販売も使用もされております。
しかし、SNSなどでは、カリフォルニア州のラウンドアップ裁判などの例を持ち出して、ラウンドアップがアメリカ国内で禁止されるかのようなミスリードを誘う主張が見られます。
当社はアメリカでの販売について当事者ではありませんが、本記事では、ラウンドアップがアメリカで禁止されるのか?という疑問に対し、実際の規制状況に基づいて解説します。
ラウンドアップはアメリカで禁止されるのか?

POINT
- グリホサートは人に対しての発がん性がある可能性は低い
- グリホサートは人への健康リスクはない
- グリホサートは世界各国の規制機関によって評価され、安全性が確認されている
いいえ、ラウンドアップはアメリカ国内において販売も使用も禁止されていません。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、現在もアメリカを含む世界150カ国以上で認可されており、大切な農作物を雑草害から守るために使用されています。
ラウンドアップがアメリカで禁止され、引いては世界中に規制の動きが広がっていくかのような主張は、実際の規制状況に基づくものではありません。ここでは、ラウンドアップの安全性に対する米国環境保護庁の見解や、アメリカのラウンドアップ裁判の判決について解説します。
(参考: 『世界がラウンドアップ禁止の流れになっているのは本当か – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.8)』)
アメリカを含む世界各国で使用されている
ラウンドアップ製品は世界で最も使用されている除草剤ブランドです(※)。日本やアメリカはもちろん、EU、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、世界各国において大切な農作物を雑草害から守るために使用されています。
SNSなどでは、一部の国や地域でラウンドアップの使用が制限されたというニュースを拡大解釈し、あたかもアメリカを含む世界各国でラウンドアップ禁止の流れになっているかのような主張が見られます。
しかし、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、2023年1月時点で世界150カ国以上から承認されており、この中には日本やアメリカも含まれています。
またラウンドアップの使用を禁止したとして名前が挙がる国や地域は、実際には農業用以外の使用を対象とし、かつ景観維持などを主目的にする、化学農薬全般に対する規制を行っているに過ぎません。しかもグリホサートに限定したものでもないため、SNSや週刊誌で見られる、あたかもグリホサートが禁止されたかのようなミスリードを誘う主張には注意しましょう。
(参考:『ラウンドアップの現状説明会』)
(参考:『世界がラウンドアップ禁止の流れになっているのは本当か – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.8)』)
米国環境保護庁は安全性を認めている
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性は、米国環境保護庁(US EPA)によって認められています。
米国環境保護庁は、アメリカ国内の大気汚染や水質汚染、土壌汚染を防ぐため、環境政策全般を担当している行政機関です。米国環境保護庁は2017年にラウンドアップ製品の有効成分グリホサートのリスク評価を実施し、「人に対しての発がん性がある可能性は低い」という結論を発表しています。また2020年の報告書でも、現在登録されている製品は「人への健康リスクはない」と評価し、「人に対して発がん性の可能性が低い」としています(※)。
このようにラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、米国環境保護庁によって安全性が評価され、発がん性などの毒性がないと認められた成分です。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関は、グリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
アメリカの裁判における判決は?
ラウンドアップがアメリカ国内で禁止される、という主張の根拠とされているのが、農薬大手モンサント(現バイエル)に対する裁判です。例えば、カリフォルニア州における裁判では、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートのラベルへの警告表示を訴えた原告側が勝訴し、モンサントに対して賠償命令が下されました。
アメリカの裁判について当社は当事者ではありませんが、この判決はラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの発がんリスクを科学的に証明したものではありません。アメリカの裁判は日本の裁判と仕組みが異なり、職業裁判官による有罪立証ではなく、一般市民から選ばれた陪審員の心証に基づいて判決が行われます。例えば、バイエル社の科学的根拠に基づいた主張に共感した陪審員よりも、訴訟ビジネスを仕掛けた弁護士の感情に訴えかけるのに長けた主張に共感した陪審員の心象割合が49%:51%で僅か1%でも上回れば、判決が下される仕組みです。
つまり、この判決は原告側弁護士の巧みな法廷戦術によって陪審員がIARC報告を発がん性の証明と誤解をした結果、個人の観察力と倫理観(感情)に基づき下されたものであり、どちらの主張が科学的または医学的に正しいかどうかを判断することはできません。結果的にバイエル社がアメリカ国内の裁判でいくつか敗訴したのは事実ですが、それはラベルへの警告表示に関する陪審員評決です。一方で、敗訴より勝訴した判決の方が多いのも事実です。
実際には米国環境保護庁(EPA)が2019年8月、カリフォルニア州がグリホサート含有製品ラベルに発がん性ありと記載するよう求めていることは誤った情報をユーザー等に伝えると批判し、ラベル記載している農薬登録者に対し3か月以内に本注意書きを削除するよう指導しています。つまり、敗訴の判決によってグリホサートの発がん性が科学的に証明された訳ではないことを理解しておきましょう。
ラウンドアップを禁止する必要はないの?

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、本当に禁止する必要がないのでしょうか。
ここでは、グリホサートの健康への影響や、世界各国の規制機関における見解を紹介します。
ラウンドアップによる健康への影響はない?
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに発がん性などの毒性は認められていません。
日本の内閣府食品安全委員会はグリホサートを対象とした毒性試験を実施し、2016年に「グリホサートには、神経毒性、発がん性、生殖毒性、催奇形性、遺伝毒性はなかった」と報告しています(※)。
特にラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの発がん性は、世界各国の規制機関や国際的な機関によって厳しいリスク評価が行われており、日本の内閣府食品安全委員会はもちろん、米国環境保護庁やカナダ保健省病害虫管理規制局、オーストラリア農薬・動物用医薬品局、ドイツ労働安全衛生研究所、ニュージーランド環境保護局などのほか、世界保健機関(WHO)、国連農業食糧機関(FAO)といった国際的な機関も発がん性を否定しています。
また、日本ではラウンドアップ製品は農林水産省登録を取得しています。この登録は、国による科学的データの裏付けに基づいて定められた使用基準を満たした製品のみが受けられるものであり、製品ラベルの適用範囲や使用方法、使用上の注意に従って使用している限り、ラウンドアップは安全にご使用いただけます。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関は、グリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
(参考:『農薬は安全?』)
一日摂取許容量を超えなければ安全
ほかの化学物質と同様にラウンドアップ製品の有効成分グリホサートにも、一日摂取許容量(ADI)という基準が設けられています。一日摂取許容量とは、「毎日一生食べ続けても健康に悪影響が出ない量」を表す基準です(※)。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの一日摂取許容量は、体重1kgにつき1日当たり1mgであることが分かっています。これはラットやマウスを対象とした試験成績に対し、さらに安全係数をかけて得られた数値です。例えば、体重が50kgの方の場合、1日当たり50mgがグリホサートの一日摂取許容量となります(※)。
例えば、週刊誌やSNS等で書かれる、パンから検出されるグリホサートの量は0.1~1.1ppmですが、これをパンの量に換算すると、体重50kgの成人で1日にパンを50kg、8枚切であれば1,000枚以上を毎日一生涯食べ続けても人体への影響はないことになります。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、この一日摂取許容量を超えて使用しなければ、安全に雑草防除を行うことができます。
(参考:『グリホサートの概要について』)
世界各国が安全性を検証している
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性は、世界各国の規制機関によって検証されており、国際的にも発がん性などの毒性がないと認められています。
例えば、グリホサートの発がん性を否定している規制機関は以下のとおりです(※)。
- 米国環境保護庁
- カナダ保健省病害虫管理規制局
- オーストラリア農薬・動物用医薬品局
- 欧州食品安全機関
- 欧州化学物質庁
- ドイツ労働安全衛生研究所
- ニュージーランド環境保護局
- 内閣府食品安全委員会
その他、国際連合食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が共同で設立したFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)や、日本の隣国である韓国の韓国農村振興庁(RDA)も、グリホサートに発がん性があるとは考えていません。
(参考: 『食品安全情報(化学物質)No. 20/ 2020』)
ラウンドアップの有効成分グリホサートを承認している国
ラウンドアップの有効成分グリホサートは、2023年1月時点で150カ国以上の国々で使用が承認されています。以下の表は、グリホサートの承認または農薬登録が確認された国のうち、主な国名をまとめたものです(※)。
地域 | 国名(一部) |
---|---|
アジア | インド、インドネシア共和国、カンボジア王国、スリランカ民主社会主義共和国、タイ王国、大韓民国、中華人民共和国、中華民国(台湾)、日本、フィリピン共和国、マレーシアなど |
ヨーロッパ(EU加盟国) | アイルランド、イタリア共和国、オーストリア、オランダ、スウェーデン王国、スペイン王国、デンマーク王国、ドイツ連邦共和国、フランス共和国、ベルギー王国、ポーランド、ポルトガルなど |
ヨーロッパ(非EU加盟国) | アイスランド共和国、イギリス、ウクライナ、スイス連邦、ノルウェー王国、ロシア連邦など |
北米・中南米 | アメリカ合衆国、アルゼンチン共和国、ウルグアイ東方共和国、エクアドル共和国、カナダ、キューバ共和国、コスタリカ共和国、コロンビア共和国、ジャマイカ、チリ共和国、パナマ共和国、ブラジル連邦共和国、メキシコ合衆国など |
オセアニア | オーストラリア連邦、ニュージーランドなど |
中東 | アラブ首長国連邦、イスラエル国、イラク共和国、サウジアラビア王国、トルコ共和国など |
アフリカ | エジプト・アラブ共和国、ガーナ共和国、カメルーン共和国、ケニア共和国、コートジボワール共和国、ナイジェリア連邦共和国、南アフリカ共和国、モロッコ王国など |
その他 | 北アイルランドなど |
このようにラウンドアップの有効成分グリホサートは、世界中の国々で使用が承認されています。
ラウンドアップはアメリカを含む世界各国で使われている
ラウンドアップの有効成分グリホサートは、アメリカを含む世界各国で承認され、大切な農作物を雑草害から守るために使用されている成分です。
SNS等では、農薬大手モンサント(現バイエル)に対する裁判を持ち出し、アメリカ国内でラウンドアップの使用が禁止されているかのような主張が行われています。しかし、米国環境保護庁はグリホサートの安全性を繰り返し確認しており、またラウンドアップ製品は販売も使用もされています。
あたかもグリホサートが危険であり、世界中で禁止されているかのような主張は間違いです。
こうした過度に不安を煽るようなSNS等の情報を鵜呑みにせず、公的機関が発表した情報に基づいて判断しましょう。
よくあるご質問
- グリホサートの禁止国は2024年どこになりますか?
- ラウンドアップはフランス、ベルギー等の一部の国や地域では使用されることが禁止されています。これは、公共の場などの景観維持の観点から化学農薬全般を制限する措置などであり、除草剤のラウンドアップに限った話ではありません。
- ラウンドアップの人体への影響は?
- 米国環境保護庁(US EPA)は、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、いかなる人体への健康リスクも認めていません。
- ラウンドアップはなぜ禁止されたのですか?
- ラウンドアップが販売中止になっているのは一部の国や地域に限られ、現在でも150以上の国で利用されています。 規制の理由はそれぞれの国やエリアにより異なるものの、その多くは農業用以外への利用で例えば景観維持の観点による化学農薬全般に対する規制です。 ラウンドアップの安全性とは何の関係もありません。