
一部のネットニュースやSNSで「除草剤は発がん物質である」という誤った主張が流布されています。除草剤は使わない方がいいのかと不安に思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、世界的に使用されている除草剤ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、世界各国の規制機関が評価し、発がんリスクがないことを確認しています。
国際がん研究機関がラウンドアップ製品の有効成分グリホサートを「おそらく人に発がん性がある」グループ2Aに分類したために誤解が広がっていますが、同グループに分類されているものを見ると、美容師や理容師、夜間シフト労働、赤肉、65℃以上の熱い飲み物など、この分類が暴露量を考慮に入れたリスク評価ではない上、分類されたものが実際にがんを引き起こすリスクでもないことが分かります。
この記事では、除草剤の発がん性およびラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性、世界各国の規制機関の見解についてご紹介します。
除草剤には発がん性のリスクがありますか?

POINT
- ラウンドアップは昭和55年に除草剤として農薬登録されている
- グリホサートは世界各国の規制機関によって評価され、安全性が確認されている
- グリホサートは繁殖毒性を持たないことが確認されている
除草剤ラウンドアップの有効成分グリホサートには発がん性のリスクはありません。事実、内閣府食品安全委員会はグリホサートを「神経毒性、発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性および遺伝毒性は認められなかった」と結論づけており、世界各国の規制機関も同様にその安全性を認めています。
なお、使用者に対しては農林水産省登録を取得している除草剤であれば、国によって科学的根拠を基にした使用基準が設けられており、適用範囲や使用方法、使用上の注意を遵守する限り人や環境への安全性が確保されています。
除草剤ラウンドアップマックスロード製品シリーズの有効成分グリホサートとは?
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、40年以上にわたり繰り返し安全性が評価されてきた成分です。さまざまな雑草種に有効で経済的・環境的利点も大きく、世界中で広く用いられています。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの使用を認めている国は、日本、アメリカ、EU、ヨーロッパをはじめとする、世界150か国以上の国々です。農業用に限らず、家庭用や緑地管理用にも用いられ、さまざまな場面で雑草の防除に役立っています。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが世界中で使われている大きな理由の1つが、40年におよぶ徹底した安全性評価です。国際がん研究機関(IARC)によってグリホサートの発がん性分類が発表された後も、世界各国の規制機関で安全性の評価が繰り返し行われ、発がん性のリスクがないことを確認しています。
グリホサートの日本国内における登録状況
農薬を製造および輸入するには、農薬取締法に則り農林水産大臣の許認可を得る必要があります。これを、「農薬の登録」といいます。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、日本では昭和55年に除草剤として農薬登録されました。
農薬登録時は、安全性に関する膨大なデータを関連省庁や内閣府が検査し、評価します。その上で、品質と安全性が確認されなければ登録できず、登録を取得していない無登録農薬は農地だけでなく、人が管理して植物を植えている庭などに使用することも違法となります。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは関連省庁や内閣府によって認められた除草剤です。
グリホサートの世界各国における登録状況
除草剤ラウンドアップの有効成分グリホサートは、2023年1月時点で日本だけでなく世界150以上の国々で登録されています。地域ごとに登録国の具体例を挙げると、北米ではアメリカやカナダ、中南米ではブラジル・メキシコ、ヨーロッパではEU加盟国のドイツやフランス、非EU加盟国のロシア、イギリス、アジアでは韓国・中国、中東ではトルコやイスラエル、アフリカではガーナや南アフリカなどです。
一部のSNS等では、あたかも発がん性等の危険性が理由で「世界中で禁止の動きが進んでいる」という主張がありますが、間違いです。実際には現在でも世界各国で販売され、使用されています。
(参考:『グリホサート(除草剤ラウンドアップの有効成分)承認国一覧』)
グリホサートはどんな場面で使用される?
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、果樹類・水田作物・麦類・豆類など、幅広い作物の栽培時の雑草駆除を目的とし使用されています。適用作物・適用雑草ごとに使用時期・使用量・使用回数・使用方法・全農薬の総使用回数が定められ、過剰な残留農薬を防ぐ仕組みも備わっています。
例えば、オリーブ(葉)の一年生雑草なら、耕起前までは通常散布で10aあたり水量50~100ℓ /10a、少量散布で10aあたり水量5~25ℓによって希釈した散布液を雑草茎葉に散布し1回まで使用でき、他の農薬も含めた総使用回数は3回以内までです。
グリホサートには発がん性のリスクがある?

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、世界各国の規制機関が繰り返し安全性の評価を行った上で、発がん性のリスクがないことを確認しています。
日本では、2016年7月に内閣府食品安全委員会が、発がん性試験及び遺伝毒性試験の結果から「グリホサートに神経毒性、発がん性、繁殖能に対する影響、催奇性及び遺伝毒性は認められなかった」と確認しています。
さらに、残留農薬のリスク評価を行う国際機関、FAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)も「食を通じてグリホサートがヒトに対し発がん性のリスクとなるとは考えにくい」と発表しています。
これらの機関は独立し、科学的知見に基づき中立公正にリスク評価を行っています。これは、実際的な知識を持った専門家が、データを科学的根拠に基づき繰り返し精査した上で導き出した客観的な評価です。
除草剤に含まれるグリホサートの発がん性は否定されている

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの発がん性は、日本だけでなく、米国環境保護庁や欧州食品安全機関なども否定しています。「世界の規制研究機関によるグリホサート評価サマリー表」を元に世界の規制機関の見解を解説します。
(参考:『世界のグリホサート安全性評価』)
米国環境保護庁の見解
米国環境保護庁(EPA)では、2017年・2019年・2020年の3度に渡り、除草剤ラウンドアップ製品に含まれるグリホサートの発がん性及び健康リスクを否定しています。特に2020年には「グリホサートによる人への健康リスクはないと判断しました」と断定し、発がん性の可能性も低いとしました。
EPAは日本の環境省にあたる行政組織で、アメリカの環境政策全般を担当しています。
オーストラリア農薬・動物用医薬品局
オーストラリア農薬・動物用医薬品局(APVMA)は2016年に「グリホサートは人に対して発がん性のリスクがない」と断言しました。また、ラウンドアップのようにグリホサートが有効成分として含まれる製品も、ラベルの指示に従えば安全であると説明しています。
APVMAは、農薬などの化学物質やそれらを含む製品の安全性と有効性を科学的に評価し、規制を行う行政機関です。
ニュージーランド環境保護庁
ニュージーランド環境保護庁(NZEPA)は2016年にラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、「発がん性または遺伝毒性の可能性は低い」と述べています。合わせて、国際がん研究機関(IARC)の報告に対し、「発がん物質として分類すべきでない」とも指摘しました。
NZEPAは、環境に影響を与える活動などを確認し、規制責任を担う行政機関です。
欧州食品安全機関
欧州食品安全機関(EFSA)は、2015年・2018年にラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの危険性を否定しています。2015年には「遺伝毒性を持たず、発がん性も低い」と評価しています。また、2018年にはグリホサートで処理された全ての作物の安全性評価を行った結果として、「人の健康にリスクをもたらすとは考えられない」と結論づけました。
EFSAは、欧州委員会(EC)とは独立した行政機関で、食品の安全に関わるリスク評価を行っています。
国際がん研究機関の見解
国際がん研究機関(IARC)は、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートを「グループ2A:おそらく人に発がん性がある」に分類しています。しかし、同グループに分類されている他のものを見ると、美容師や理容師、夜間シフト、65℃以上の熱い飲み物、牛肉・豚肉・ラム肉などの赤肉など、この分類が暴露量を考慮に入れたリスク評価ではない上に、分類されたものは実際に癌になるリスクではないことが明らかです。
そのため、世界各国の規制機関がIARCの分類に対して否定的であり、例えば欧州化学機関(ECHA)は「(IARCの)発がん物質の危険分類には正当性がない」と厳しく批判しています。
除草剤による発がんリスクを正しく理解しよう!
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートについては、IARCにより「おそらく人に発がん性がある」グループに分類されたことから、あたかも発がん性のリスクがあり危険であるという主張が一部SNS等で流布しています。しかし、これは誤解です。
IARCの分類では、暴露量を考慮に入れたリスク評価が行われているわけではなく、上述したように同グループに分類されている他の項目を見れば、発がん性のリスクがないことが理解できます。事実、日本の内閣府食品安全委員会はグリホサートに発がん性のリスクがないことを確認しており、それは世界各国の規制機関でも同様です。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、その有効性・安全性が認められ、世界150カ国以上の国々で使用が承認されており、農業場面だけでなく産業場面や一般家庭でも、さまざまな場面で雑草管理に貢献している除草剤です。
よくあるご質問
- 日本で、農薬の残留基準値において、ラウンドアップの主成分であるグリホサートの基準値が緩和されているのか?
- 誤解となります。
日本では、一日摂取許容量の内訳である残留基準値を変えました。
全部緩和されていたわけではなく、厳格化されたものもあります。例えば、小麦とかソバとか菜種などの33品目は緩和をされました。一方で、きのこ・インゲン・えんどう豆・肉類などの35品目は逆に厳格化されました。その他の102品目は変更なしとなっています。
また、一日摂取許容量のトータルを変えなければ安全に支障はありません。 - ラウンドアップの人体への影響は?
- 米国環境保護庁(US EPA)は、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、いかなる人体への健康リスクも認めていません。
- ラウンドアップは人体に蓄積されますか?
- ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、体内に残留せず、髪の毛や尿などから排泄されるため身体には蓄積されません。