更新日:2024.06.28グリホサートは本当に使用禁止?安全性をわかりやすく解説

「ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが禁止された」などの情報に触れ、それは事実なのか、事実だとすれば禁止の理由は何なのか不安に思う方もいるのではないでしょうか。

結論として、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、農薬の有効性・安全性を審査する、世界150か国以上の規制機関で認可され、現在も世界各国で販売も使用もされています。一部の国や地域では使用禁止などと言われていますが、その多くは農業用以外の使用、例えば景観維持の観点から使用を禁止している事例などであり、グリホサートに限らず化学農薬全般に対するものです。安全性に問題があり禁止されている訳ではないため、安心して利用できます。

本記事では、ラウンドアップ製品のグリホサートは本当に使用禁止されているのか、禁止が不要な理由や安全性を解説します。

グリホサートはなぜ禁止されたのですか?

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは現在でも世界中で利用されています。一部の国や地域では使用を禁止しているものの、安全性の問題からではなく、その多くは農業用以外の使用、例えば景観維持の観点から使用を禁止している事例などであり、グリホサートに限らず化学農薬全般に対するものです。

グリホサートの概要

グリホサートは、除草剤であるラウンドアップ製品の有効成分です。一年生雑草から多年生雑草、草雑潅木など対応する雑草の範囲が広く効果的に作用するため、経済性にも優れています。農業用としては品質と生産性の向上に、家庭用では手間のない雑草の防除に長年利用されてきました。

日本国内では昭和55年に農薬登録され、世界ではアメリカやヨーロッパでも登録されています。昨今、あたかも人の健康に影響があるかのような主張が見られますが、安全性についてはラウンドアップ製品の有効成分グリホサートほど徹底的に検討された農薬は他にありません。40年以上にわたり、安全性評価で世界中の専門家が出した結論の圧倒的多数は、ラベル記載を遵守して使用する限り、人間、野生動物、環境に悪影響を及ぼすリスクを示さないというものです。

グリホサートの使用は禁止されている?

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、現在でも日本はもちろん世界各国で使用されています。

世界には農薬などの化学物質が人間や環境に対しどのような影響を与えるか確認・評価する規制機関があります。例えば、日本では農薬登録を申請される農林水産省、関連する厚生労働省、内閣府食品安全委員会、環境省などです。世界での規制機関では以下などがあります。

  • JMPR(合同残留農薬専門家会議):FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関※IARCの上部組織)が共同で農薬の残留基準値を決めるために設立。
  • 食品安全委員会:国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下、規制や指導等のリスク管理を行う関係行政機関から独立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行うため、2003年7月1日に新たに内閣府に設置された機関。
  • 欧州食品安全機関:EFSA(European Food Safety Authority)。欧州委員会により食品の安全性に関する科学的なリスク評価を行う機関。
  • 欧州化学物質庁:ECHA(European Chemicals Agency)。EU内の化学物質の管理について統一性を持たせることを目的として、化学物質の登録、評価、認可、制限の手続きの運用・調整を行う欧州連合(EU)の専門機関の一つ。
  • 米国環境保護庁:EPA(United States Environmental Protection Agency)。人間の健康および、大気・水質・土壌などに関する環境の保護・保全を目的とした行政機関。
  • カナダ保健省病害虫管理規制局:PMRA(Health Canada Pest Management Regulatory Agency)カナダ保健省の支部として 1995 年に設立された農薬規制を担当する行政機関。
  • ニュージーランド環境保護庁:EPA (New Zealand Environmental Protection Authority) 環境に影響を与える活動を規制する責任を担っている行政機関。
  • オーストラリア農業・動物用医薬品局:APVMA(Australian Pesticides and Veterinary Medicines Authority)農薬や動物医薬品などの化学物質及びその製品に対してヒト、動植物、環境を保護するため、安全性及び有効性の科学的評価により規制を行う行政機関。

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、これら世界中の規制当局で安全性が評価されています。

グリホサートの使用を禁止している国はある?

海外の一部の国や地域では、ラウンドアップのようにグリホサートを含む除草剤の使用を禁止していることもあります。ただし、その多くは農業用以外の使用、例えば景観維持の観点から使用を禁止している事例などであり、グリホサートに限らず化学農薬全般に対するものです。

一部のSNSなどでは、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは世界中で禁止の流れだという主張が見られますが、間違った情報です。2023年1月現在でも、150以上の国々において使用を認可されているのが事実です。

農薬工業会によると、農薬は農産物の安定生産のための重要なツールと考えられます。

2020年の世界の人口78億人に対し、2050年には97億人に達し、その人口増加の大部分が発展途上国で生じると予想されています(国際連合経済社会局「世界都市人口予測2019年改訂版」より)。かつてFAO(国際連合食糧農業機関)は、この人口増加により生じる食料の需要増に対応するためには、2050年の農業生産を2006年の水準より60%以上増加させる必要があると予想しました。

このような農業生産の安定的かつ持続的な増加を支えるための生産資材として、今後も農薬の果たす役割は重要です。

(参考:『食料危機が心配されています。これから農薬は食料問題にどのような役割を果たしていくのでしょうか。』

ラベルに記載の適用雑草と使用方法を遵守することが大切

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに限らず、農薬を安全に使用するためには事前に使い方や適用範囲を確認し、遵守しなくてはいけません。使用前に以下の農薬の製品ラベルの内容を確認しましょう。

製品ラベル 内容
デザイン部分 登録番号・種類名・名称・成分・性状・内容量・毒物及び劇物取締法による表示・消防法等による表示が書かれています。
記載部分 適用病害虫雑草の範囲・使用方法・効果・薬害等の注意事項・安全使用上の注意事項などが記載されます。内容は農薬を使う前に読んで理解しておかないといけないことが記載されています。

作物の種別ごと使用量や使用方法、使用回数が決められています。トマトとミニトマトなど、似ている種別は間違えないように注意も必要です。

(参考:『農薬の製品ラベルはどのような構成になっていますか。』

グリホサートの使用を禁止する必要はないの?安全性について解説

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、発がん性や他の毒性が世界各国の規制機関で否定されています。ベトナム戦争で使われた枯葉剤だから危険だという主張や、輸入小麦や食パンから残留したグリホサートが検出されたのがあたかも健康への悪影響があるかのような主張も、これらは全て間違った情報です。なぜ禁止する必要性がないのか、安全性を詳しく解説します。

発がん性は否定されている※

ラウンドアップに含まれるグリホサートは、世界の規制機関が発がん性を否定しています。内閣府食品安全委員会は、グリホサートには神経毒性・発がん性・繁殖能に対する影響・催奇形性・遺伝毒性のいずれも認められないとしました。(2016年7月)

残留農薬の基準値を決める国際機関、FAO/WHO合同残留農薬専門家会議も「食を通じ人間に対し発がんリスクがあるとは考えにくい」と発表しています。(2016年5月)

また、欧州では欧州食品安全機関(EFSA)が2015年11月に「グリホサートは発がん性または変異原性を示さず、受精能、生殖、胚発生に影響する毒性を持たない」、欧州化学物質庁(ECHA)が2017年3月に「グリホサートは発がん性物質、変異原性物質あるいは生殖毒性と分類する基準に合致しない」という見解を示しました。

米国でも、米国環境保護庁(EPA)が2017年12月に「グリホサートはヒトに対して発がん性があるとは考えにくい」と結論付けた評価書案を公表し、その後2019年4月にも「グリホサートは発がん物質ではないことを確認した」という見解を示しました。

その他カナダ保健省病害虫管理規制局(PMRA)、ニュージーランド環境保護庁(EPA)、オーストラリア農業・動物用医薬品局(APVMA)も同様の見解を示しています。

なお、国際がん研究機関(IARC)が発がん性に関する分類で、グリホサートを美容師や理容師、夜間シフト労働、牛肉・豚肉・ラム肉などの赤肉、65℃以上の熱い飲み物などと同じグループ2Aと発表しました。この内容を見れば、実際にがんを引き起こすリスクではないということが分かります。

※唐木氏監修

ベトナム戦争で使われた枯葉剤ではない

ラウンドアップに含まれるグリホサートは、ベトナム戦争で使われた枯葉剤とは異なります。

ベトナム戦争で使用された枯葉剤エージェントオレンジに含まれていて、多くの健康被害を出したダイオキシンは生産過程で発生する副産物ですが、ラウンドアップ製品の製造工程においてダイオキシンが生成することはなく、製品中にダイオキシンは含有しておりません。

現在では、全ての農薬の生成過程でダイオキシンが生じないこと、そして実際に含まれていないことを、農薬登録時に確認しています。また、農薬の有効成分は製造方法・製造場所・不純物成分とその含有量まで厳格に規定され、安全性試験の実施も必須です。したがって、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートはベトナム戦争で使われた枯葉剤だというのは間違った情報です。

一日摂取許容量の範囲内なら問題ない

一部のSNSなどでラウンドアップ製品の有効成分グリホサートがパンや輸入小麦から検出され、あたかも健康に悪影響を及ぼすかのような記述がありますが、そもそも一日摂取許容量(ADI)の範囲内であれば人間の健康に何の影響もありません。ADIとは、農薬などの化学物質を人間が一生涯に渡って毎日摂取したとしても、健康上影響がないと考えられる一日あたりの量です。

例えば、グリホサート(ラウンドアップ製品の有効成分)のADIは体重1kgにつき1日当たり1mgです。よく週刊誌やSNSで書かれている「パンで検出された量」というのは0.1~1.1ppmという量。これは0.1から1.1mg/kg程度の量です。ADIの基準値に当てはめるなら、体重50kgの人間でいうと毎日パンを50kg一生涯食べ続けなければならない量になります。例えば、8枚切りの食パン1枚45gで計算すると、体重50kgの人は1日に1,000枚以上を毎日一生涯食べ続けないとADIには達しません。摂取不可能な量だと理解できるはずです。

ラウンドアップ製品の主成分グリホサートの安全性をしっかりと理解しよう!

ラウンドアップ製品に含まれるグリホサートは、幅広い雑草に効果があり40年以上の長きにわたり利用されています。最近では安全性に対する誤認が広がっているものの、世界の規制機関が発がん性などを否定しており、現在でも150以上の国と地域が使用を認めています。

一部のSNSなどに見られる、あたかもグリホサートが健康に悪影響をもたらすかのような記述には、科学的根拠に基づかないものも多々あります。さまざまな意見に触れるときは、何を根拠に危険だと関連付けて主張をしているのか、その主張に科学的根拠があるのかまで確認するとよいでしょう。

監修者情報

※本文中の監修に関する記載がある内容のみ監修

唐木 英明 氏
(からき ひであき)

東京大学名誉教授 
食の信頼向上をめざす会代表

実績・経歴
東京大学農学部獣医学科卒業
同大学助教授、教授を経て2003年より名誉教授。
2003年 内閣府食品安全委員会専門委員を務める。
2023年 春の叙勲において、瑞宝中綬章を受章。

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