ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、国から有効性・安全性を共に認められています。しかし、昨今SNSなどであたかも人体への影響があるかのような主張が流されていることから、「発がん性があるのではないか」と不安に感じている方もいらっしゃるでしょう。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性は、40年以上にわたって第三者による検証論文の積み重ねを得て科学的に正しいと評価され、世界の規制当局が発がん性はないと公表しています。農薬は多くの試験で得られた安全な量に対してさらに安全係数をかけて、人間が摂取する上でも安全な量が定められています。農産物は、これを超えるものが市場に流通しないように規制するための「残留農薬基準値」により安全性が守られています。
この記事では、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの人体への影響を専門家の意見も交えて詳しく解説します。
グリホサートをどのくらい摂取すると人体への影響がある?
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、体重1kg当たり1mgを一生涯毎日摂取しても人の健康に何の害も及ぼさないことが分かっています。さらに、摂取しても尿中や髪から排出されるため、体内に蓄積されることもありません。ここでは、毒性学の専門家 東京大学名誉教授 唐木英明 氏の説明を交え、グリホサートの人体への影響を解説します。
グリホサートの一日摂取許容量
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの一日摂取許容量(以下、ADI)は体重1kg当たり1日1mgです。
ADIとは特定の物質や成分について、人が一生涯毎日摂取しても、健康に悪影響がでないと推定される1日あたりの摂取量のことです。なお、ADIの安全性評価は内閣府食品安全委員会が、動物実験などによる毒性試験結果から設定しています。
例えば、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの場合、体重50kgの成人なら、毎日50mg(0.05g)以下なら一生涯摂取し続けても、人の健康に何の害も及ぼしません。
一日摂取許容量の範囲内なら安全性は守られている
仮にパンなどからラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが検出されたとしても、ADIの範囲内であれば人の健康に何の害も及ぼしません。
例えば、週刊誌などでは、パンであれば1kgあたり0.1~1.1mg程度のグリホサートが検出されたそうです。これをパンの量に換算すると、体重50kgの成人で1日にパンを50kg、8枚切であれば1,000枚以上を毎日一生涯食べ続けても人体への影響はないことになります。
実際に計算してみると、グリホサートのADIを超えるほど摂取するのは不可能と分かります。専門家の唐木氏は「そのパンをどれだけ食べたら一日摂取許容量を超えるのか、こういう計算をしてみれば安全性がわかる」と述べています。
(参考:『Chapter6パンやお菓子からグリホサート成分がごく微量検出されたとしても、一日摂取許容量(一生の間、毎日食べ続けても安全な量)以内なら安全性は守られている』)
グリホサートは身体に蓄積されない
さらに、食品から摂取したラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、体内に蓄積されません。今は使われていない過去に使用されていた農薬の中には、人体に蓄積するものもありました。
しかし、長期的な健康への影響が懸念されたため、体内に蓄積する恐れのある農薬は開発・市場流通共にされておらず、現在は人体に蓄積性のある化学物質は農薬として使用されていません。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、体内に残留せず、髪の毛や尿などから排泄されるため身体には蓄積されません。唐木氏は「普段から私たちはいろんな化学物質を摂っていますけれども、それがどんどん出ているから溜まらない。だから身体は健康だ」と述べています。
(参考:『Chapter7グリホサート成分は身体に蓄積しないため、 髪の毛や尿から検出されているのは、きちんと排泄されている証拠である』)
グリホサートの残留基準値は緩和されたわけではない
SNSなどの一部の投稿で「グリホサート(ラウンドアップ製品の有効成分)の残留基準値は緩和された」とあるもののこれは不正確です。正確には「一部は緩和、一部は厳格化」されています。
なお、農薬の残留基準値はADIの 80%以内に収まるように設定されており、都合の良いように変えられるわけではありません。ラウンドアップ製品はさまざまな作物に使われるため、それぞれの作物にどれだけのグリホサート(ラウンドアップ製品の有効成分)が残留していてもよいのか、残留基準値を作物ごとに設定し、日常の食生活の中で全ての作物を摂取してもADIを超えないようにしているため、例えば国際的な食品貿易の枠組み等の事情によって作物ごとの内訳を変更しても、人の健康に何の影響もないように安全性が守られています。
日本ではグリホサートの残留基準値を変更した結果、小麦やソバなど33品目が緩和され、キノコや肉類などの35品目は厳格化されました。他102品目の基準は変更されていません。
量と作用の関係に注目することが大切
さまざまな意見が飛び交う化学物質の安全性を正しく理解するためには、「量と作用の関係」の理解が大切です。東京大学名誉教授の唐木英明氏によると、化学物質の人体への影響は量に比例し、「多量なら毒性が高く、少量なら無害」という特性があります。この特性を利用して農薬の安全性は「量の規制」で守られています。
例えば、身近な“塩”も200gなど一度に多量に摂取すれば、最悪の場合死に至ります。10g以上毎日摂取すれば、高血圧などで健康を害するかもしれません。一方、摂取が少なすぎれば欠乏症により体調を崩すかもしれません。安全と言われている食塩でも量によって危険から安全あるいは必要性までずっと変わっていきます。そういった「量と作用の関係」を理解するのは、とても大事なことです。
分析技術の発達により、いままで検出されなかったごく微量の化学物質でも検出できるようになりました。微量の化学物質は数多くの食品に含まれていますが、ごく微量であれば健康への影響はありません。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性を知りたいときも、もし仮に食品からグリホサートが検出されたという情報に触れたときは、どのくらいの量が検出されたのかを見ることで、現実的にADIを超える量が摂取できるレベルでなければ、人への健康に何の影響もない量ということが分かります。
多くの規制当局は人体への影響を否定している
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、日本の内閣府食品安全委員会をはじめ世界各国の規制当局が発がん性のリスクはないと公表しています。あたかも人の健康への悪影響があるかのような主張には、証拠として挙げられる論文の科学的正確性が乏しいケースがほとんどであるため、注意が必要です。
グリホサートの発がん性のリスクは否定されている※
2015年に国際がん研究機関(IARC)は「IARC発がん性分類」で、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートを美容師や理容師、夜間シフト労働、赤肉、65℃以上の熱い飲み物などと同じグループ2Aに分類したことから、その発がん性分類の意味を誤解した主張が一部のSNSや週刊誌で見られます。
東京大学名誉教授の唐木英明氏によると、世界の研究者が非常に多くの論文に基づいて、発がん性はないという結論を出しているのに、国際がん研究機関だけが発がん性があるという判定をした。これに対して世界の研究者が、それはおかしいということで非常に強い反論をしています。
なお、IARC発がん性分類は、人に対する暴露量を考慮に入れたリスク評価ではないので、規制に用いられるものではありません。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが美容師や理容師、夜間シフト労働、赤肉、65℃以上の熱い飲み物などと同じグループであることからも、お分かりいただけるかと思います。よって、IARCの分類についてそれほど心配する必要はありません。
※唐木氏監修
世界中の規制機関が安全性を認めている
実際に、ラウンドアップの主成分グリホサートは、日本だけでなく世界中の規制機関が安全性を認めています。規制機関は、科学的知見に基づき食品や農薬などの安全性評価やリスク評価をする専門家集団です。
例えばラウンドアップに含まれるグリホサートは、以下のような規制機関が安全性を評価しています。
- JMPR(合同残留農薬専門家会議):FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関※IARCの上部組織)が共同で農薬の残留基準値を決めるために設立。
- 内閣府食品安全委員会:国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下、規制や指導等のリスク管理を行う関係行政機関から独立して、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行うため、2003年7月1日に新たに内閣府に設置された機関。
- 欧州食品安全機関:EFSA(European Food Safety Authority)。欧州委員会により食品の安全性に関する科学的なリスク評価を行う機関。
- 欧州化学物質庁:ECHA(European Chemicals Agency)。EU内の化学物質の管理について統一性を持たせることを目的として、化学物質の登録、評価、認可、制限の手続きの運用・調整を行う欧州連合(EU)の専門機関のひとつ。
- 米国環境保護庁:EPA(United States Environmental Protection Agency)。人の健康および、大気・水質・土壌などに関する環境の保護・保全を目的とした行政機関。
- カナダ保健省病害虫管理規制局:PMRA(Health Canada Pest Management Regulatory Agency)カナダ保健省の支部として 1995 年に設立された農薬規制を担当する行政機関。
- ニュージーランド環境保護庁:EPA (New Zealand Environmental Protection Authority) 環境に影響を与える活動を規制する責任を担っている行政機関。
- オーストラリア農業・動物用医薬品局:APVMA(Australian Pesticides and Veterinary Medicines Authority)農薬や動物医薬品などの化学物質及びその製品に対してヒト、動植物、環境を保護するため、安全性及び有効性の科学的評価により規制を行う行政機関。
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性は、40年以上にわたる世界の研究者による多くの検証論文の積み重ねと、世界各国の規制機関の検証により安全性が確保されています。
グリホサートの摂取量と人体への影響の関係性を知っておこう!
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートのADI(一日摂取許容量)は、体重1kg当たり1mgを一生涯、毎日摂取したとしても人の健康に何の影響もありません。
さらに、ラウンドアップのグリホサートは体内に蓄積されることもありません。化学物質の人体への影響は量に比例し、「多量なら毒性が高く、少量なら無害」という特性があります。この特性を利用して農薬の安全性は「量の規制」で守られているので、もし仮に食品に残留が検出されたという情報を見て安全性を正しく把握したいときは、検出された量がADIに対してどの程度の量なのか、を確認することが大切です。安全性を正しく把握したいときは基準値に対しどの程度の摂取量となるのかの確認が大切です。