
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートについて、一部の国や地域で使用禁止だというニュースを耳にした方もいるかもしれません。SNSや週刊誌では、世界的にグリホサートを禁止する流れになっているのに、なぜ日本は販売を継続しているのか、というミスリードを煽るような主張もなされています。
世界の販売状況を見ると、現在もラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは最も使用されている除草剤です。またグリホサートの使用を禁止したとして名前が挙げられる国や地域は、実際には農業用以外の使用を対象とし、たとえば景観維持などの理由で化学農薬全般に対する規制措置を行ったというケースが多く、グリホサートに限定した規制ではありません。
当社は日本国以外の販売については当事者ではありませんが、本記事ではラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは本当に世界中で販売中止になったのか、実際の販売状況に基づいて解説します。
グリホサートが世界中で禁止というのは本当ですか?

POINT
- グリホサートは世界各国の規制機関によって評価され、安全性が確認されている
- 規制されている理由は、安全性に問題があるからではない
- 公共の場などの景観維持の観点から一部の国や地域では使用されることが禁止されているがこれは化学農薬全般の使用を制限する措置などでありラウンドアップに限ったことではない
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが世界中で禁止になっているという主張は誤りで、実際は世界各国の規制機関によって安全性が確認され、現在も販売・使用されています。
一部の国や地域でグリホサートの使用を規制した事例はありますが、実際に禁止されたのは農業用以外の使用(公共の場での使用など)で、たとえば景観維持などの理由などです。また、これらの多くは化学農薬全般に対する措置であり、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに限ったものではありません。
ここでは、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの実際の販売状況について解説します。
グリホサートは世界各国で使用されている
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、現在も雑草防除を目的として世界各国で使用されています。
SNSなどでは、あたかもラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが世界中で禁止されているかのように主張されることがありますが、事実ではありません。グリホサートを農薬として承認している国は、2023年1月の時点で150カ国以上です。
またラウンドアップ製品の有効成分グリホサートを規制している国や地域も存在しますが、安全性に問題があるからではありません。実際にはフランスのように少量しか使われていなかった古い製剤の1種類のみを対象とした規制であったり、スリランカのように自国の主要作物(茶・ゴム)には使用できるものであったりと、グリホサートの販売・使用そのものを禁止したわけではありません(※)。
(参考:『ラウンドアップの現状説明会』)
(参考:『世界がラウンドアップ禁止の流れになっているのは本当か – グリホサートの真実とは2【完全版】(vol.8)』)
農業用以外の使用を禁止している事例はある
ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに関する規制の大部分は、農業用以外での使用に関してであり、たとえば景観維持などを理由とした化学農薬全般に対するものです。
国や地域 | 農業用以外の使用規制対象 |
---|---|
フランス | 化学農薬全般 |
バミューダ諸島 | 希釈する化学農薬全般 |
カナダ(バンクーバー) | 公共の場と家庭園芸で化学農薬全般 |
オランダ | 舗装面と非農耕地で化学農薬全般 |
例えば、カナダのバンクーバーは公共の場や家庭園芸における使用、オランダは舗装面や非農耕地での使用が規制の対象です。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートを農業用に使用すること自体が禁止されているわけではありません。
またこうした規制は化学農薬全般に関わるものであり、安全性に問題があるからではありません。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが危険だから規制が行われているかのようなミスリードを招く主張に注意しましょう。
グリホサートに対する世界各国の規制機関の見解

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、世界保健機関(WHO)や国際連合食糧農業機関(FAO)をはじめ、日本の内閣府食品安全委員会、米国環境保護庁(US EPA)や欧州食品安全機関(EFSA)、カナダ保健省病害虫管理規制局など、国際的な機関や世界各国の規制機関によって安全性が認められています。
ここでは、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性に対する国際機関および公的機関の見解を紹介します。
合同残留農薬専門家会議
JMPR(合同残留農薬専門家会議)は、FAO(国際連合食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)が共同で農薬の残留基準値を決めるために設立した国際的な組織です。
合同残留農薬専門家会議は、グリホサートの再評価を実施し、2016年に「グリホサートは、予想される食事での暴露量で、遺伝毒性を示す可能性は低い。グリホサートは、食事での暴露量で人に発がん性のリスクをもたらす可能性は低い。」と発表しました(※)。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関はグリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
米国環境保護庁
米国環境保護庁(US EPA)は、人間の健康や自然環境の保護・保全を目的として、米国内における環境政策を担当している行政組織です。
米国環境保護庁はラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、「人間に対しての発がん性がある可能性は低い」と報告しています(※)。ラベル記載の注意点に従って製品を使用する限り、グリホサートが人間の健康に対して害を及ぼすことはありません。
また米国環境保護庁は、生物の内分泌系に影響を及ぼす内分泌撹乱物質についてのスクリーニングプログラム(EDSP)も実施しており、グリホサートが外因性内分泌撹乱物質であることを示す兆候はないと結論付けています(※)。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関はグリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
(参考:『食品安全情報(化学物質)No. 20/ 2020』)
欧州食品安全機関
欧州食品安全機関(EFSA)は、EU内で流通する食品の安全性について、科学的な立場からリスク評価を行っている規制機関です。
欧州食品安全機関はラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、「遺伝毒性を持たない、また人間に対して、発がん性がある可能性が低い」という見解を示しています(※)。
また欧州食品安全機関は、グリホサートが使用された全ての作物を対象としてリスク評価を行っており、現在の人間に対する暴露量を考慮すると、人間の健康に悪影響を及ぼす可能性はないと結論付けています(※)。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関はグリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
カナダ保健省病害虫管理規制局
カナダ保健省病害虫管理規制局(PMRA)は、カナダ保健省の支部の一つで、主に国内における農薬規制を担当している行政組織です。
カナダ保健省病害虫管理規制局はラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、ラベル記載の注意点に従って使用した場合、「容認できない人間の健康や環境へのリスクがもたらされることはない」と報告しています(※)。
このようにカナダ保健省病害虫管理規制局をはじめとした農業規制機関は、グリホサートに発がんリスクがあるという立場を取っておらず、国際的なコンセンサスが形成されています。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関はグリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
欧州化学機関
欧州化学機関(ECHA)は、欧州化学物質庁とも呼ばれ、EU内の化学物質の登録、評価、認可、制限などを行っている規制機関です。
欧州化学機関は過去の疫学データや、ラット・マウスを使用した長期的な研究結果に基づいて、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートのリスク評価を行っています。
欧州化学機関に先立って、国際がん研究機関(IARC)がグリホサートの評価を行い、発がん性をGroup 2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類しました(※)。しかし、この分類は世界各国の規制機関によって疑義が示されており、欧州化学機関も「(IARCの)発がん性の危険分類には正当性がない」という立場を取っています。
(参考:『グリホサートに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集結果について』)
韓国農村振興庁
韓国農村振興庁(RDA)とは、韓国国内における農産物の生産性向上などを目的として、さまざまな試験や研究を実施している行政組織です。
韓国農村振興庁はラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、「グリホサートに関する疫学研究において、がんとの関連性は見つからなかった」と報告しています(※)。
このように日本の隣国である韓国の規制機関においても、グリホサートに発がん性があるという主張は認められていません。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関はグリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
オーストラリア農薬・動物用医薬品局
オーストラリア農業・動物用医薬品局(APVMA)は、オーストラリア国内の人間・動植物・環境を保護するために設けられた行政組織です。主に農薬や動物医薬品に含まれる化学物質を対象として、その安全性や有効性の科学的評価を行っています。
オーストラリア農業・動物用医薬品局はラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、「人間に対して発がん性のリスクはない」と報告しました(※)。またグリホサートが含まれる製品は、ラベルの指示に従って安全に使用できるという見解を示しています。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関はグリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
ニュージーランド環境保護庁
ニュージーランド環境保護庁(EPA)は、ニュージーランドにおいて自然環境に影響を及ぼす可能性のある活動を規制するための行政組織です。
ニュージーランド環境保護庁は、2015年から2016年にかけてエンドウ豆と小麦のグリホサート残留量を調査し、最も高濃度のグリホサートが検出された検体でも、食品安全上の懸念はないと報告しました(※)。
また2015年には、牛乳におけるグリホサート残留量の調査も実施しており、グリホサートは検出されていません。もしグリホサートが牛乳から検出されても、ニュージーランド環境保護庁は「食品安全上の懸念になることはほぼありそうにない」という見解を示しています(※)。
(参考:『食品安全情報(化学物質)No. 20/ 2020』)
日本の内閣府食品安全委員会
日本の内閣府食品安全委員会は、2003年7月1日に内閣府に設置された規制機関です。農林水産省をはじめとした関係行政機関から独立し、第三者の立場から中立公正に食品のリスク評価を行っています。
内閣府食品安全委員会はラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに対し、「神経毒性、発がん性、生殖毒性、催奇形性、遺伝毒性はなかった」という報告を行っています(※)。
また内閣府食品安全委員会は、海外の規制機関による評価書を参照するだけでなく、実際に行われた試験成績に基づいてグリホサートの安全性を評価しています。
(参考:『国際的な規制機関と研究機関はグリホサート(ラウンドアップの主成分)の健康への影響をどのように考えていますか?』)
グリホサートは世界中で使われている除草剤!

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、現在も世界中で雑草防除に使われています。
一部のSNSや週刊誌では、あたかもグリホサートが世界中で禁止の流れが広がっているかのような根拠のない主張が繰り返されています。しかし、グリホサートの安全性は、日本の内閣府食品安全委員会や米国環境保護庁(US EPA)、欧州食品安全機関(EFSA)などの規制機関のみならず、世界保健機関(WHO)や国連農業食料機関(FAO)などの国際的な機関によっても認められており、農業用以外で規制措置を行っている国や地域はごく一部であるものの、そのほとんどで農業用としては使用が可能で、安全性が理由でないことは明らかです。
あたかも世界中で禁止の流れがあるかのような不安を煽るSNS上の情報に惑わされる必要はなく、引き続き安心してご使用いただけます。
よくあるご質問
- ラウンドアップの発売中止はいつですか?
- ラウンドアップが販売中止になっているのは一部の国や地域に限られ、現在でも150以上の国で利用されています。 規制の理由はそれぞれの国やエリアにより異なるものの、その多くは農業用以外への利用で例えば景観維持の観点による化学農薬全般に対する規制です。 ラウンドアップの安全性とは何の関係もありません。
- グリホサートはなぜ禁止されたのか?
- ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは現在でも世界中で利用されています。一部の国や地域では使用を禁止しているものの、安全性の問題からではなく、その多くは農業用以外の使用、例えば景観維持の観点から使用を禁止している事例などであり、グリホサートに限らず化学農薬全般に対するものです。
- ラウンドアップはアメリカで禁止されているのですか?
- ラウンドアップはアメリカ国内において販売も使用も禁止されていません。 ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、現在もアメリカを含む世界150カ国以上で認可されており、大切な農作物を雑草害から守るために使用されています。