更新日:2024.03.29グリホサートが病気を引き起こすかのような主張がある?

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートがさまざまな病気を引き起こすかのような主張は真実なのか?という疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

SNSなどでは、論文などを取り上げて、あたかもラウンドアップ製品の有効成分グリホサートには発がん性や遺伝毒性があり、多くの病気の引き金になっているかのような主張がなされています。しかし、危険だとする論文があったとしても、第三者による検証論文の積み重ねがないため、正しい科学的根拠にはなりません。

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性は、日本の内閣府食品安全委員会をはじめとした各国規制機関によって評価され、確認されています。

本記事では、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに病気を引き起こす可能性はあるのか、専門家や公的機関の見解に基づいて解説します。

グリホサートが病気を引き起こすかのような主張に正しい根拠はありますか?

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートががんや神経障害などの病気を引き起こすかのような主張に科学的根拠はありません。

一部のSNSや週刊誌では、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが多くの病気の原因であるかのような主張が行われていますが、これは正しい科学的根拠に基づかないものです。こうした主張は世界各国の規制機関によって否定されており、日本の内閣府食品安全委員会も多くの毒性試験を評価し、グリホサートの安全性を確認しています。

ここでは、内閣府食品安全委員会などの公的機関の見解を元にして、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートと病気の因果関係について解説します。

がんを引き起こす可能性は?

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに発がん性は認められていません。食品安全委員会はグリホサートの発がん性試験を実施し、グリホサートには発がん性は認められないと結論付けています。

SNSなどでは、国際がん研究機関(IARC)によってグリホサートが理容師や美容師、牛肉・豚肉・ラム肉などの赤肉、65℃以上の熱い飲み物、夜間シフト労働などと同じグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある)に分類されたことから、あたかもグリホサートががんを引き起こすかのような主張が行われています。しかし、このIARCによる分類は、人がグリホサートにさらされる暴露量を考慮していないハザード評価という手法に基づくものです。実際、同グループに分類されている他のものを見ても、実際にがんが発生するリスクではないことがお分かりいただけるかと思います。

遺伝毒性はある?

いいえ、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの遺伝毒性はありません。

内閣府食品安全委員会は発がん性試験と同様に、グリホサートの遺伝毒性試験も実施しています。この遺伝毒性試験は毒性学の検証手法に基づくもので、内閣府食品安全委員会だけでなく、米国環境保護庁(US EPA)や欧州食品安全機関(EFSA)など、世界各国の規制機関に採用されています。

グリホサートは遺伝毒性試験の結果に対し、さらに安全係数をかけて安全な量が決められており、その基準を超える量の使用は認められていません。ラベル記載の注意点を守って使用していれば、人に対する遺伝毒性を示すことはないため、安心してラウンドアップ製品をご利用できます。

生殖能力に有害作用を及ぼす?

いいえ、ラウンドアップ製品をはじめとした農薬全般が、生殖能力に有害作用を及ぼすという科学的根拠はありません。

農薬は市場で販売する前に、農林水産省に対し登録申請を行う必要があります。この登録申請の過程では、農薬の安全性を確認するための多岐に渡る毒性試験が行われており、その一部に母親から胎児への影響を調べる催奇形性試験や、生殖・繁殖に及ぼす影響を調べる繁殖毒性試験なども含まれます。

特に繁殖毒性に対しては、親世代・子世代・孫世代の三世代に渡って厳しくリスク評価が行われており、農林水産省の登録を取得した農薬が生殖能力に有害作用を及ぼすことはありません。ラウンドアップ製品は1980年に登録を取得しており、繁殖毒性を持たないことが確認されています。

発達障害を引き起こす可能性は?

いいえ、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートと発達障害の因果関係を証明した科学論文は存在しません。発達障害や自閉症をめぐる仮説には、誤りを含んだものもあるため、科学的なコンセンサスを得た主張かどうかを注意深く確認する必要があります。

例えば、1998年には英国の医師によって、自閉症と三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風)にあたかも因果関係があるかのような主張がなされました。しかし、このリーキーガット症候群をめぐる仮説は、後に不正が発覚して取り下げられており、該当医師は医師免許を剥奪されています。

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートをめぐる主張に対しても、危険だとする論文があるだけでは、第三者による検証論文の積み重ねがなく、正しい科学的な根拠があることにはなりません。論文が正しいかどうかは「方法の適切さ」と「結果の再現性」の検証で決まります。再現性とは、第三者がその研究で使用された材料・方法などを用いて同じ実験を繰り返し行った場合に、元の研究者が行ったときと同様の結果が出るのかを検討するもので、同じ結果が出て初めて「再現性がある=正しい」と判断されます。さらに、全く別の実験方法を使って、元の論文と同じ結論が得られるのかも重要な検証方法です。

科学界では毎年100万件以上の論文が世に出ており、それらは大きく分けて2つに分類されます。1つは、新しい仮説を発表するもので、もう一つはその仮説が正しいものであるかどうか検証するものです。毒性学の専門家 唐木氏は、「危険という論文が一つ出ると心配になるということはよく理解はします。多数の論文と全く違う一つがポンと出てきたときには“これはおかしい”と思わないといけない」と述べています。たとえ論文の情報を取り上げているとしても、SNS上の情報をすぐに鵜呑みにしないようにしましょう。

多くの慢性疾患の原因になる?

一部の研究者は、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートが、多くの慢性疾患の原因になるかのような主張を続けています。例えば、米国のコンピューター研究者であるセネフ博士は関連するテーマのバックグラウンドが全くないにも関わらず、あたかもグリホサートががんや糖尿病、末梢神経障害、肥満、喘息、骨粗しょう症、不妊などの多くの病気を引き起こすかのような過激な主張を展開しました。

しかし、この主張は科学的なコンセンサスを得ておらず、英国のメスネイジ博士やアントニオ博士によって否定されています。セネフ博士が主張したようなグリホサートとグルテン過敏症の関連性、マンガンのキレート化、グリシンとの結合作用に関する主張は、いずれも推測に基づくものであり、他の研究者による検証を経たものではありません。

このように、グリホサートと慢性疾患の関連性を証明した科学的根拠は存在しないことを知っておきましょう。

グリホサートが病気を引き起こす可能性はない?

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは化学物質ですが、どのような仕組みで人が摂取した際の安全性が守られているのでしょうか。

農薬を含めた化学物質は、数多くの試験によって安全とされる量を見極め、さらに安全係数をかけて、人が摂取しても安全な量が定められています。この量を基に農薬を使用される作物毎に設定されるのが「残留基準値」です。残留基準値は、ADI(一日摂取許容量)を超過しないと確認された上で設定されており、グリホサートもこのような量の規制によって安全性を守られているのです。

さらにラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性を考える上で大切なのが、ADI(一日摂取許容量)という基準です。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、このADIの範囲内であれば、人の健康に対して何の影響もありません。

ここでは、グリホサートのADIの根拠や、世界各国の規制機関における見解を紹介します。

ADI(一日摂取許容量)の範囲内なら健康に何の問題もない

ADI(一日摂取許容量)とは、毎日一生食べ続けても健康に悪影響が出ない量のことです。先述したとおり、残留基準値はADIを基に設定されており、作物毎の残留基準値は、ADIの範囲に収まるように設定されています。

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートのADIは、体重1kgにつき1日当たり1mgです。つまり、体重50kgの方の場合、グリホサートを1日50mg摂取しなければ、ADIを超えることはありません。

グリホサートのADIについて理解を深めるために、食パンを例に挙げて考えてみましょう。以前、週刊誌において書かれた食パンから検出されるグリホサートの量は0.1~1.1ppmですが、これはパン1kgにつき0.1~1.1mg程度の量です。つまり、体重50kgの方がADIに達するグリホサートを摂取するためには、毎日パン50kgを食べなければならない計算となります。8枚切りの食パン(1枚45g)で言えば、1日に1,000枚以上を一生涯食べ続けることで、やっとADIを超える計算になります。

このように、農作物に含まれるラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、残留基準値という量の規制に守られており、基準値を決めるもととなるグリホサートのADIは、現実的には摂取不可能な量です。

(参考:『Chapter5グリホサートの残留基準値は緩和されたのではない』

(参考:『Chapter6パンやお菓子からグリホサート成分がごく微量検出されたとしても、 一日摂取許容量(一生の間、毎日食べ続けても安全な量)以内なら安全性は守られている』

世界の規制機関によって安全性が認められている

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、国際的な機関である世界保健機関や国連農業食糧機関をはじめ、世界各国の規制機関によって安全性が確認されている成分です。

例えば、グリホサートの発がん性のリスクがないことは以下の国際機関や規制機関によって確認されています。

  • 国際保健機関WHO/国連食糧農業機関FAO(JMPR合同残留農薬専門家会議)
  • 米国環境保護庁
  • カナダ保健省病害虫管理規制局
  • オーストラリア農薬・動物用医薬品局
  • 欧州食品安全機関
  • 欧州化学物質庁
  • ドイツ労働安全衛生研究所
  • ニュージーランド環境保護局
  • 日本の内閣府食品安全委員会

例えば、米国環境保護庁によるリスク評価は、国際がん研究機関よりも有意に広大かつ現実的なデータセットを用いたものであり、国内外の専門家や規制機関の見解と一致しています。グリホサートの安全性が気になる方は、こうした公的機関によるリスク評価に基づいて判断しましょう。

(参考:『食品安全情報(化学物質)No. 20/ 2020』

グリホサートが病気を引き起こす可能性は否定されている!

SNSや週刊誌では、グリホサートに発がん性や遺伝毒性があるという主張や、あたかも発達障害との因果関係があるかのような主張が見られます。しかし、グリホサートの安全性については多くの毒性試験が行われており、その妥当性は日本の内閣府食品安全委員会をはじめとした各国規制機関にも評価され、確認されています。

SNS等などで見られる、あたかも科学的根拠があるかのような情報に惑わされず、公的機関の見解に基づいて判断しましょう。

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