更新日:2024.06.28グリホサートは日本で規制されている?正確な規制状況を解説

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートはあたかも危険であるかのような主張がSNSなどで見られることから、日本では規制されているのかと不安に思われる方もいるのではないでしょうか。

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートの安全性は内閣府食品安全委員会が繰り返し安全性を評価し確認しており、農業場面だけでなく産業場面や一般家庭でも幅広く雑草管理に使われています。なお、日本だけでなく世界の規制機関でも安全性が確認されており、現在でも150以上の国々で使用が承認されているのが事実です。

この記事では、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは日本で規制されているのか、なぜ規制の必要がないのか、世界各国の規制機関の見解や国際的な評価を交えて解説します。

グリホサートは日本では規制されていますか?

除草剤ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、日本で規制されていません。日本では、農林水産省での安全性審査の他に内閣府食品安全委員会、厚生労働省、環境省などさまざまな機関でも人の健康に対する安全性の評価が行われており、規制がかけられていないのは、これらの機関がグリホサートの安全性を確認しているからです。なお、製品ラベルには適用範囲や使用方法、使用上の注意について内容が書かれているため、よく確認した上で使用しましょう。

除草剤ラウンドアップマックスロード製品シリーズの有効成分グリホサートとは?

ラウンドアップマックスロード製品のグリホサートは、日本だけでなく世界中で40年以上に渡り使われている除草剤の有効成分です。幅広い雑草類に効果があり、経済性に優れ環境上も大きな利点です。農業や緑地管理向け製品だけでなく、家庭用製品も普及しています。

最近では、SNS等でグリホサートがあたかも危険であるかのような主張が流布されていますが、それらは科学的な正確性に乏しく誤った理解です。世界各国の規制機関は、グリホサートには発がん性はないとして、その安全性を評価し承認しています。なお、使用者に対しては、農林水産省登録を取得している除草剤であれば国によって科学的根拠を基にした使用基準が定められていますので、適用範囲や使用方法、使用上の注意を遵守することで安心してご使用いただけます。

日本では除草剤として農薬登録されている

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、1980年(昭和55年)に日本で除草剤として農薬登録されました。食品衛生法に基づく残留農薬基準は120種以上の作物に設定されており、多くの農作物の品質と生産性の向上に寄与しています。

なお農薬はどのようなものでも使える訳ではありません。製造や輸入、使用をするためには、品質や安全性に関わる膨大なデータを農林水産省、厚生労働省、環境省および内閣府が検査・評価し、農林水産大臣の許認可を得る必要があります。この許認可を登録と呼び、農薬取締法により定められています。

アメリカやヨーロッパでも除草剤として承認されている

ラウンドアップの有効成分グリホサートは、日本だけでなくアメリカやEU、ニュージーランド、中国、韓国など世界150以上の国と地域で除草剤として承認されています。

なお一部の海外では使用禁止などと言われているものの、その多くは農業用以外の使用です。例えば景観維持の観点から使用を禁止している事例であり、ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートに限らず化学農薬全般に対するもので、安全性が理由でないことは明らかです。

(参考:『グリホサート(除草剤ラウンドアップの有効成分)承認国一覧』

使用方法に関する一定の規制はある

除草剤ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、安全性が認められているものの使用方法には一定のルールがあります。これは、作物の農薬残留量や環境への影響を考え、農薬全般に使用時期や使用量が定められるためです。

例えば、ラベルには適用範囲と使用方法が記載されています。適用範囲とは、使用できる作物・場所・雑草・使用時期・使用量・使用方法・使用回数のことです。

使用方法は適用範囲に対する以下の定めです。

  • いつ使用できるか(耕起前など)
  • どの程度使用できるか(薬量と希釈水量や原液散布の使用量など)
  • 何回使用できるか(3回以内など)
  • どのように使用するか(雑草茎葉に散布など)
  • 総使用回数の条件(3回以内など)

(参考:『農薬の製品ラベルはどのような構成になっていますか。』

グリホサートを日本で規制する必要はないの?

結論から言えばラウンドアップ製品の有効成分グリホサートを日本で規制する必要はありません。そもそも日本では、農林水産省が行っている安全性の審査以外にも内閣府食品安全委員会や厚生労働省、環境などさまざまな公的機関によって安全性の検討・評価が行われています。現在、規制がかけられていないのは、これらの公的機関によってグリホサートの安全性が確認されているからです。グリホサートの安全性や規制が不要な理由を解説します。

グリホサートの危険性はない?※

農薬の国際基準の設定のためリスク評価を科学的に行う国連のFAO/WHO合同残留農薬専門家会議(JMPR)は、2016年5月に「食を通じてグリホサートがヒトに対して発がん性のリスクとなるとは考えにくい」と発表しています。さらに2018年5月には、WHOはJMPRが評価をした化学物質に対し、国際がん研究機関(IARC)が評価を行うことは混乱を招くと批判しました。

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは発がん性を含むさまざまな項目で、適正なガイドラインに沿った多数の試験成績を基に、継続的かつ厳正に審査した上で使用が認可されています。

※唐木氏監修

ADI(一日摂取許容量)の範囲内なら健康に何の影響もない

SNS等ではラウンドアップ製品の有効成分グリホサートがパンや輸入小麦から検出され、あたかも健康に悪影響を及ぼすような記述が見受けられますが、検出されること自体は問題ではありません。なぜなら分析法が進歩して、これまでは測定できなかったような微量の化学物質も測定できるようになっただけだからです。微量の化学物質は数多くの食品に含まれていますが、ADIの範囲内であれば摂取しても健康上何も問題はありません。

ADIとは、特定の物質についてヒトが生涯その物質を毎日摂取し続けても、健康に対する悪影響がないと推定される1日当たりの摂取量です。食品の生産過程で使用が必要な食品添加物や農薬などの安全性指標に用いられます。

グリホサートのADIは体重1kg当たり1mgです。具体例を挙げると、体重70kgの成人であれば、毎日一生涯にわたりグリホサート70mgを摂取し続けても健康上の問題は生じないことになります。例えば、週刊誌やSNS等で書かれる、パンから検出されるグリホサートの量は0.1~1.1ppmですが、これはパン1kgにつき0.1~1.1mg程度の量です。つまり、体重70kgの方がADIに達するグリホサートを摂取するためには、毎日パン70kgを食べなければならない計算となります。8枚切りの食パン(1枚45g)で言えば、1日に1500枚以上を一生涯食べ続けるのは明らかに非現実的であり、グリホサートのADIが摂取不可能な量だと理解できるでしょう。

(参考:『Chapter6 パンやお菓子からグリホサート成分がごく微量検出されたとしても、一日摂取許容量(一生の間、毎日食べ続けても安全な量)以内なら安全性は守られている』

内閣府食品安全委員会は健康への影響を否定している

日本の内閣府食品安全委員会は、2016年7月「グリホサートには神経毒性、発がん性、繁殖能に対する影響、催奇形性及び遺伝毒性は認められなかった」との見解を示しています。

内閣府食品安全委員会は、関連行政機関から独立し、客観的かつ公正中立にリスク評価を行う機関です。リスク評価では、食品の摂取により有害要因が健康に及ぼす悪影響の発生確率とその程度を科学的に評価しています。リスク評価の結果から問題がある場合、食の安全性確保のために行う施策を内閣総理大臣から関係各大臣に勧告を行うことも可能です。

除草剤ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは国により発がん性などのリスクがないと確認されています。

世界中の規制機関が安全性を認めている

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、EU、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど世界各国の規制機関が発がん性のリスクを否定しています。

例えば、米国環境保護庁(EPA)は、2019年4月に「グリホサートは発がん物質ではないことを確認した」と発表しました。さらに同年8月にはカリフォルニア州に対し「グリホサート含有製品ラベルに発がん性ありと記載するよう求めることは、誤った情報を消費者などに伝えること」であると批判し、90日以内に注意書きを削除するように指導もしています。

なお、IARCの発がん性分類はハザード評価であり、発がんの可能性を示しただけです。ある物質の暴露量が考慮されたリスク評価ではない上、分類に使用した論文の中には方法論や再現性を疑問視されるものも含まれているため、IARCの評価のみを根拠とし規制をする必要はありません。

グリホサートは日本で幅広く使われている除草剤

ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、1980年(昭和55年)に日本で除草剤として農薬登録され、以後40年以上に渡り農業用から家庭用まで幅広く使用されています。日本で規制する必要がないのは、農林水産省や内閣府食品安全委員会、厚生労働省、環境省などさまざまな機関でその安全性が確認されているからです。

さらにグリホサートの安全性は、日本の公的機関だけでなく、世界各国の規制機関にも確認されています。

そのため、SNS等で見られる、グリホサートを危険とする科学的根拠に欠ける誤った主張や、IARCの発がん性分類のように方法論や再現性を疑問視されている評価に対して過度の不安を抱く必要はありません。ラウンドアップ製品の有効成分グリホサートは、適用範囲や使用方法、使用上の注意を遵守する限り、安全に雑草管理ができますので、引き続き安心してご使用いただけます。

監修者情報

※本文中の監修に関する記載がある内容のみ監修

唐木 英明 氏
(からき ひであき)

東京大学名誉教授 
食の信頼向上をめざす会代表

実績・経歴
東京大学農学部獣医学科卒業
同大学助教授、教授を経て2003年より名誉教授。
2003年 内閣府食品安全委員会専門委員を務める。
2023年 春の叙勲において、瑞宝中綬章を受章。

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